第二次世界大戦から七十年が過ぎました。
第二次世界大戦を経験した人が少なくなっていくなかで、戦争という破壊行為が世界規模で繰り広げられた事実を語り継ぐことが必要になってきています。
第二次世界大戦の切り口は様々です。
「二つの祖国」は、アメリカで暮らす日系日本人たちが、アメリカで第二次世界大戦に突入して戦争に巻き込まれる視点で進むストーリーです。
戦争を通してアメリカと日本、2つのアイデンティティーで翻弄される悲劇の物語です。
天羽賢治は、戦争中アメリカで日本とアメリカのどちらに忠誠を誓うかという選択を迫られ、戦争後はアメリカ軍人として極東軍事裁判の言語モニターの日々で神経を擦り減らせていきました。
山崎豊子著の同名小説を原作としたドラマ「二つの祖国」。
主人公の日経2世のアメリカ人・天羽賢治は実在したのでしょうか?
二つの祖国の結末をネタバレ!
ネタバレを含みます。
天羽家はアメリカで必死に生活をしている家族でした。
天羽家の3兄弟は、日本人のルーツを持ちつつアメリカを祖国として育ちます。
しかし、第二次世界大戦の勃発で天羽家の人々はアメリカの収容所に送り込まれ、アメリカに忠誠を誓うかを問いただされました。
天羽賢治の弟・勇はアメリカに忠誠を誓いヨーロッパ戦線で戦士、忠は日本の大学に在籍中で、日本軍の兵士になりました。
そして、天羽賢治はアメリカ軍に入隊、戦地で弟の忠と敵対し、忠の足を撃ってしまいました。
忠の命は助かりますが、賢治との間に亀裂が生じます。
日本が戦争に負け、進駐米軍で通訳として日本にやってきた賢治は、極東軍事裁判の言語モニターとして働き、神経をすり減らしていきました。
米軍にいながら、日本も愛する心をもった日経2世として、進駐軍側通訳で極東軍事裁判に臨む日々の中、家族との関係が壊れました。
また結婚前から心を通わせていた日系2世の女性・井本梛子が広島で被爆し、「私は祖国に殺されなければならなかったのか」と嘆きながら死んでいくのを見送った後、賢治は彼女の後を追うように自殺しました。
原作は実話?
山崎豊子さんは、小説を書くにあたり徹底した取材をもとに小説を書くことで有名な方です。
その徹底した取材に基づくストーリーは、リアリティすぎる描写ゆえ、実話なのかという指摘がよく話題になる作家さんでもあります。
「二つの祖国」は山崎豊子さんのオリジナルストーリーですが、天羽賢治のモデルになったと言われる人物が2人います。
伊丹明さんと福原克治さんです。
伊丹明さんについて
アメリカ国籍。
子供時代、叔母のいる日本で学校教育を受け、アメリカに戻った後、新聞記者になりました。
太平洋戦争でアメリカ陸軍に勤務、戦後、極東軍事裁判で通訳モニターを担いました。
自殺して39才で生涯を閉じました。
福原克治さんについて
アメリカ生まれ。
広島出身の父が急逝し、母と5人の子供たちは日本に戻りました。
しかし、福原克治さんは日本の生活になじめず、単身アメリカに戻りました。
太平洋戦争が開始し、アメリカ軍人として戦地に赴きました。
一方、日本に残った母と兄は、日本人として太平洋戦争を経験しました。
弟は日本軍に所属し、戦地であえば敵として戦う可能性もありました。
母と兄は広島で被爆、兄は被爆の影響で死亡しました。
戦後、家族を養うために進学をあきらめ、アメリカ軍に留まり、働きました。
二つの祖国ドラマキャスト
天羽賢治役:小栗旬
日系2世のアメリカ人。新聞記者でした。
第二次世界大戦が開始し強制収容所で屈辱的な生活を送った後、アメリカ軍に入隊。
新聞記者時代の同僚の井本梛子と淡い恋心を通わせますが、梛子の友人である恵美子と結婚。
戦後、進駐軍として日本において極東軍事裁判の通訳モニターになり、神経をすり減らしていきました。
結果、恵美子との結婚生活は破綻、一度は日本に呼び寄せた妻と子供をアメリカに帰しました。
天羽エミ―役:仲里依紗
井本梛子とは学校時代からの友人。
日本に滞在したことがないまま、第二次世界大戦に突入。
賢治と結婚して子供が2人生まれます。
アメリカ軍に入隊した賢治と離れて暮らすある日、強姦にあい精神を病んでいきました。
進駐軍勤務になった賢治に呼び寄せられて、子供と来日しました。
しかし、賢治が仕事で追い詰められるのを感じながら、日本になじめず、強姦にあったことが尾を引き、夫婦生活は破綻します。
子供とともにアメリカに帰国後、賢治の自殺を知りました。
チャーリー田宮役:ムロツヨシ
日系2世で、賢治の友人。
野心家で、戦時中、アメリカで成功するため迷いのない行動をとります。
井本梛子と結婚しますが離婚。
井本梛子役:多部未華子
天羽賢治と新聞記者時代の同僚。
チャーリーとの離婚後、戦時交換船(戦時下で敵国に取り残された人びとを帰国させるために運航された)で広島に帰郷。
アメリカの原爆投下の影響で白血病を発症し、この世を去りました。
天野忠役:高良健吾
賢治の弟。
日本の大学に留学中に第二次世界大戦がはじまり、日本軍に徴兵されました。
戦場で、アメリカ軍の兵士の賢治から撃たれ、負傷しました。
兄に撃たれたことで性格が荒れていきます。
戦後、進駐軍の賢治と敗戦国民の自分という違いに苦しみ、闇市など危ない仕事に手を出すこともありました。
井本梛子との再会で、賢治への気持ちと折り合いをつけました。
まとめ
山崎豊子の同名小説のドラマ化である「二つの祖国」。
第二次世界大戦を様々な切り口で語られることは、重要なことだと思われます。
様々な視点で第二次世界大戦が描かれるたびに、また知らなかった、知ろうとしなかった事実を知るきっかけになります。
戦争は、人々の命と生活の場を奪います。
第二次世界大戦から七十年あまりたちましたが、世界のどこかで紛争は起こり続けています。
第二次世界大戦が世界に残した傷跡を繰り返さないためにも、忘れないことが必要なのだと思います。
ドラマ「二つの祖国」は、私たちが忘れないためにも意義深い作品です。