岡田将生さん主演でドラマ化される『昭和元禄落語心中』
そのタイトルの通り、落語をテーマにした物語ですが、それだけではなく「八雲」と「助六」二人の人生を描いていて、人情や恋愛、嫉妬など色んな要素が盛り込まれたヒューマンドラマになっています。
最終回では、隠れた家族の物語が明かされるので、そのあらすじを原作からネタバレしていきたいと思います。
昭和元禄落語心中の最終回ネタバレ
「昭和元禄落語心中」は「八雲」「助六」という名跡を襲名した人びとのヒューマンストーリーです。
時代を追って順にストーリーをたどっていきましょう。
六代目八雲には有能な弟子が2人いました。
後の七代目八雲(六代目の実子)と初代助六でした。
初代助六の落語の素晴らしさを一番知っていたのは七代目八雲でしたが初代助六は、七代目八雲を襲名することなく落語界を去りました。
初代助六が可愛がっていた天涯孤独の子供が初太郎で、小さい時から初代助六の落語をきいて落語の世界で一旗揚げることを夢見ていました。
第二次世界大戦前、菊比古(後の初台目八雲)と初太郎(後の二代目助六)は、七代目八雲の元に入門しました。
入門当初から親代わりだった初代助六の夢を自分がかなえたいー八代目八雲を継ぐ落語家になりたいと言い切っていた初太郎。
対照的に、菊比古は入門当初は落語に積極的ではありませんでした(芸者の子供だった菊比古は踊りで身をたてようとしていましたが、足にケガをして断念、同じ芸の世界ということで母親が勝手に知り合いだった七代目八雲の弟子入りさせたのです)。
戦中、七代目八雲は自分の妻とともに菊比古を疎開させ、七代目自身は初太郎を連れて慰問落語で戦場を渡り歩いていました。
戦後、再び邂逅した菊比古と初太郎の落語家としての力の差は歴然としたものになっていました
天真爛漫で天賦の才能に恵まれた初太郎はトントン拍子で人気者の落語家の階段を登っていきました。
初太郎は二代目助六を襲名し、落語界のスター的存在になっていったのです。
菊比古は地道に稽古を積み上げていて実力がなかったわけではないのですが、隣に天才落語家がいるので、その差を痛いほど実感して憧れと嫉妬に苛まれていました。
真面目に稽古に励む菊比古と対照的に、二代目助六は落語以外の生活全般、特に女と金にだらしなく、いつもトラブルを背負っていました。
落語界の重鎮たちは、二代目助六の生活態度に眉をひそめていました。
精進しながら思うような落語ができない菊比古の前に現れたのが、芸者のみよ吉でした。
みよ吉は激しく奔放な性格で、菊比古と正反対の性格でした。
菊比古とみよ吉は恋に落ちました。
みよ吉との恋愛も影響したのでしょうか、それとも子供時代に女形の踊り子としての所作を身に付けていたのが功を奏したのでしょうか?
噺に登場する女性の描写が秀逸と評判になり頭角を現していきました。
噺家としての自信をつけ始めた菊比古は、芸を極めるために、みよ吉と別れることを決意します。
みよ吉にとっては、菊比古に捨てられた形でした。
その頃、二代目助六こと初太郎の行動は七代目八雲が守り切れないほど、はちゃめちゃになっていました。
落語界の品格に値しないー初太郎は七代目八雲に破門されてしまったのでした。
失意の初太郎は、菊比古に捨てられたみよ吉といっしょになり授かった小夏という子供を連れて、みよ吉の故郷に去っていったのでした。
二代目助六の破門は菊比古にとっても衝撃でした。
天賦の才能がある初太郎こそ、次の八雲にふさわしいと菊比古は感じていました。
菊比古は、初太郎を落語界に引き戻す決心をして、初太郎に会いにいきました。
田舎で再会した初太郎は、みよ吉とうまくいっていませんでした。
落語に未練を持って吹っ切れないでいた初太郎は真面目に働くこともしていなかったからです。
菊比古と再会した初太郎は落語界でもう一度やり直す決意を固めていました。
その夜、菊比古はみよ吉に呼び出されました。
みよ吉は、菊比古のことを諦めきれていなかったのです。
みよ吉は菊比古に
「いっしょに死んでほしい」
と言います。
激しい情念にたじろぐ菊比古。
そこに初太郎がやってきました。
みよ吉は初太郎に今までの溜まっていた怒りを全てぶつけ、持っていた包丁で初太郎を刺しました。
それを見ていたのは、実は菊比古だけではなかったのでした。
初太郎とみよ吉の子供の小夏も見てしまったのです。
小さな小夏は父の初太郎が大好きでした。
落語を話す父を愛していました。
小夏は父が母に刺されたのを見て、母のみよ吉を窓に向かって突き飛ばしてしまいます。
バランスを失ったみよ吉を助けようと、負傷した初太郎がみよ吉を抱きかかえ、2人は転落死しました。
小夏はショックでみよ吉をつきとばしたことを忘れました。
菊比古は、小夏を抱きしめると
「私が全部悪いのだ」
と小夏に何度も何度も言い聞かせました。
菊比古は、両親を失った小夏を養女として引き取り、その後八代目八雲を襲名しました。
「昔の名前なんて忘れました…」
時代は過ぎて漫才ブームの陰で落語の人気は凋落の一途をたどっていた昭和50年代。
孤高の落語家・八代目八雲は、弟子をとることを拒み凋落する落語と心中する決心をしていました。
そこに出所したばかりで八雲の慰問落語に惚れたという与太郎が現れたのです。
行く当ては八雲のところと勝手に決めてかかってウキウキと楽し気なその青年を八雲は家に連れて帰りました。
弟子なのか弟子でないのかはっきりしない状態で与太郎は、八代目八雲の家に居候を始めます。
与太郎は八雲から稽古をつけてもらえませんでしたが、八雲の付き人として八雲の落語をきいてはますます、落語にのめり込んでいきました。
与太郎に落語のイロハを教えたのは、養女の小夏でした。
小夏は亡くなった父の残していたメモ帳やレコードで落語を習得していたのです。
与太郎に
「落語家になればいいのに」
と言われるほどの実力を持っていました。
小夏から稽古をつけてもらえた結果、与太郎は、二代目助六を受け継いだ芸風になって成長してきました。
ある時、与太郎は八代目八雲の怒りをかう大失態を犯して破門になりかけました。
必死に許しを乞う与太郎を見て、いつもは八雲と反目していた小夏まで許してやってはもらえないかと八雲に頼みました。
八雲は落語と心中することやめました。
与太郎に落語を引き継ぐ決心をしたのです。
更に時は流れ、時代はバブル景気からその崩壊直後。
落語人気はどん底でした。
落語界を取り巻く状況が厳しい中、与太郎は真面目に落語に打ち込んでいました。
小夏が父のわからぬ子を身ごもったことを知って、家族になりたいと小夏に申し込み、小夏と結婚しました。
小夏が生んだ子は信之助と名付けられました。
小夏との結婚と前後して与太郎は真打に昇進し、三代目助六を襲名しました。
落語界復活に向けて、積極的にテレビにも出演し三代目助六は人気者になっていきます。
八代目八雲は、病の倒れ床に臥せる日が多くなり、ある日ラジオから流れる三代目助六の落語を聞きながら、小夏や信之介と過ごす日だまりの中、息を引き取りました。
息を引き取った八雲を待っていたのは助六とみよ吉でした。
八雲と助六は久しぶりに落語を披露することになりました。
落語を聞きに来た大事なお客は、小夏と信之介でした。
楽しく落語を語ったあと、助六は借金があるので自分はまだ成仏できないのだと言いました。
三途の川を先にわたる八雲を助六は見送りました。
更に時がたち八雲が亡くなって十数年後。
信之介は真打に昇進し、天才的な才能を開花させ「菊比古」を名乗っていました。
三代目助六は九代目八雲襲名が決まります。
小夏は女流落語家としての道を歩み始めていました。
落語界は再び人気を復活し始めています。
落語だけでなく家族の物語に感動?
時系列で「昭和元禄落語心中」をたどってくると、落語界の名跡「八雲」と「助六」の壮大なヒューマンストーリーであることがわかります。
中心にいるのが八代目八雲です。
八代目八雲を襲名した時、菊比古は凋落する落語とともに心中する決意で、弟子をとらないことを一度は誓いました。
しかし、ひきとった小夏や与太郎との日々の中で八雲の心境は変化していきます。
八雲にとって、小夏や与太郎、そして信之介は家族なのです。
そして、八雲と共に心中するはずだった落語は、与太郎や信之介、小夏へ引き継がれていくことになりました。
・信之介の父親は?
小夏が生んだ信之介の父親がはっきり描かれているシーンはありません。
小夏自身も黙して語らないのです。
ですが、八代目八雲が亡くなった後、二代目助六とあの世のちょっと手前で開いた落語会。
客席には一番聞かせたかった人物がいます。
二代目助六の客席には小夏、八代目八雲の客席には信之介が座っています。
つまり。
信之介の父は八代目八雲であるという暗示的なシーンなのです。
八代目八雲と小夏の関係は、非常にぎくしゃくしていながら、互いに「八雲と助六」を取り巻く運命の中で、求め合っていたのかもしれません。
真相は小夏があの世の持っていってしまうのでしょう。
ドラマのキャストは?
アニメで、声優として参加されたキャストの皆さんは、オーディションのお題が「昭和元禄落語心中」で出てくる「死神」や「野ざらし」という落語だったといいます。
キャストの皆さんが落語を演じるシーンの熱量は半端なものではありません。
実写化でも、落語のシーンに注目が集まることは必至ですし、楽しみですよね。
・八雲役:岡田将生
・与太郎役:竜星涼
・小夏役:成海璃子
・みよ吉役:大政絢
・助六役:山崎育三郎
まとめ
昭和元禄落語心中は壮大なヒューマンドラマでした。
落語のことはもちろんですが、それ以外にも登場人物を取り巻く環境が生々しく描かれています。
小夏と八雲の関係は最後まで描かれることはありませんでしたが、最後に暗示的な描写をしてくれた作者のおかげでスッキリ終わることができたような気がします。
ドラマではどう描かれるのか、こちらも楽しみですね。