2018年11月、中国の研究者がゲノム編集で赤ちゃんを誕生させたというニュースが世界を駆け巡りました。
そのニュースの衝撃で思い出したのは、試験管ベビーといわれた体外受精の問題や、臓器移植、それに付随する脳死の法制度の問題でした。
医療技術は進み続けていて、画期的な技術に人間の倫理が後追いしているのを常に感じます。
遺伝子編集で生まれた赤ちゃんの問題に対する、世界の反応、世間の感情と同じ空気感はドラマ「孤高のメス」が描かれた1989年に臓器移植を行った主人公を取り巻く世間の空気感とおそらく似た状態だったのではないかと思います。
ドラマ放映直前のタイミングで、遺伝子編集された赤ちゃん誕生のニュースが入ってきたことで、ドラマの見方が多元的になることは、決してマイナスではないと思います。
主演の滝沢秀明さんにとっても、俳優として最後のドラマが医療技術と向かいあう重いテーマであったことは意義のある仕事の区切りになったのではないでしょうか。
孤高のメスの放送日はタッキー引退後?
ドラマ「孤高のメス」はwowowのオリジナルドラマW枠にて2019年1月から全8回放送されます。
滝沢秀明さんは、2018年12月で芸能界を引退しますので、ドラマ「孤高のメス」は滝沢さん引退後に放映されることになります。
孤高のメスのあらすじ
臓器移植法が施行したのは1997年。
それより前の1989年、関西の小さな湖水町にある甦生記念病院がドラマの舞台になります。
地方での手術のレベルは低く、難易度の高い手術は都市の病院へ搬送するのが常態化していました。
地方でも都市と同じ水準の医療レベルを提供したいー甦生記念病院へ赴任してきた当麻鉄彦は医療先進国アメリカで身に付けた技術でそれまで都市に送りだしていた患者の手術も行い始めました。
医療スタッフの意識も徐々に変わり始め、当麻医師のレベルを目指し始めます。
患者も当麻医師に信頼を寄せて集まってきます。
当麻医師は、アメリカで学んだ肝臓移植の技術で患者を救いたいと思っていました。
しかし、当時の日本は、「心臓死を死として定義」している時代です。
肝臓移植でしか助からない緊急の患者を目の前にして、脳死のドナーが現れました。
法律的に1989年当時「脳死」は人間の死と認められていません。
「脳死」の患者から肝臓を取り出すことは、法的に殺人になります。
しかし、脳死の患者の家族は肝臓の提供を申し出ました。
手術当日、マスコミが手術を大きく取り上げ、刑事も駆けつける騒ぎになります。
しかし、肝臓の移植で助かる命があって、ドナーの家族は提供に同意しているー命を助けたい当麻医師は、脳死のドナーから肝臓移植手術を成功させました。
当麻医師は、告訴されることはなかったものの、蘇生記念病院を去って行きました。
孤高のメスのキャストは?
当麻鉄彦役:滝沢秀明
アメリカで肝臓移植技術を学んで、外科手術の高いレベルの腕を持つ医師。
地方での医療水準を上げたいという気持ちで湖水長の甦生記念病院に赴任してきます。
実川剛役:仲村トオル
肝移植の実現に取り組む医師。
当麻の医療技術を高く評価し、大きな病院で腕をふるって欲しいと願っていました。
当麻に地方医療の底上げがしたいという強い意思に触れ、その意思を尊重するに至ります。
肝臓移植実現は2人の目標であり、ともに助け合う立場です。
大川松男役:長塚京三
肝臓移植を受ける患者。
移植を受けなければ死を待つしかない極限の状況で、肝臓移植を受け入れることに悩みます。
島田光治役:石丸幹二
甦生記念病院の院長。
大学病院から派遣を受けて外科が成立しているところに、当麻がやってきて派遣医師たちと対立することに頭を悩ませています。
当麻医師の誠心誠意の診療に次第に、心を動かされるようになっていき、肝臓移植を行うことを申し出た当麻医師に院長としてGOサインを出すことになります。
青木隆三役:工藤阿須加
大学から派遣された若手の医師。
同じく大学から派遣されている上司の医療ミスの患者を押し付けられ、患者を最期まで看取りました。
青木の医師としての資質を潰さないために、当麻は自分が研修していたアメリカの機関に紹介状を書き、青木をアメリカに送り出します。
当麻が肝臓移植をするとき、サポートする医師として日本に帰国しました。
大川翔子役:山本美月
甦生記念病院の手術室担当の看護師。
レベルの低い地方病院での手術に情熱を失っていました。
そこに、当麻医師がやってきて、「道具は大切に扱ってください」と注意されます。
その当麻医師の手術レベルの高さに驚き、翔子は高いレベルの手術をサポートできる看護師になることを改めて決意します。
その他出演者
宮川一朗太・利重剛・三浦誠己・近藤公園・六平直政・本田博太郎・キムラ緑子他
まとめ
2010年堤真一主演で映画化された「孤高のメス」が、2019年1月からwowowにて連続ドラマとして放映されます。
原作は「孤高のメス」シリーズでベストセラー作家にして現役医師である大鐘稔彦さんです。
法律が整備されていない状態で、脳死患者から臓器移植を行った医師のストーリーを全8話で丁寧に綴っていきます。
肝臓移植を行うまでの医師の描写は、なぜ彼が肝臓移植をする決意を固めたかを視聴者に問いかけることになるでしょう。
倫理的に殺人ととられかねない医療行為を、あえて行った医師の生きざまを主演するのは、滝沢秀明さんです。
2018年で引退する滝沢秀明さんが俳優の最後の仕事に選んだ作品です。
2018年11月、ゲノム編集された赤ちゃんが生まれたという衝撃のニュースが世界を駆け巡りました。
そんな中で、1989年当時、倫理的にも法的にも手術が容認されていなかった脳死患者からの臓器移植を行った医師の物語のドラマ化は非常に意味深いものとなりそうな気がします。
改めて、医療技術と倫理、道義的意味を考えることが非常に重要な時期だと思います。